top of page

腹膜播種に対する手術治療
・Surgical Treatment for Peritoneal Dissemination
「腹膜播種だから手術できない」で終わらせない。
大腸癌腹膜播種・腹膜偽粘液腫に対する治療
大腸癌による腹膜播種や腹膜偽粘液腫は、お腹の中を覆う腹膜や腸管の表面、骨盤内、横隔膜の下、大網などに腫瘍や粘液性病変が広がる病態です。従来、腹膜播種は「がんが腹腔内に広がった状態」と考えられ、切除不能進行がんとして薬物療法が中心となることも少なくありませんでした。しかし近年では、腹膜播種であっても、すべての患者さんが手術不能というわけではありません。病変の広がり、腫瘍の性質、全身状態、他臓器転移の有無、薬物療法への反応などを総合的に評価し、目に見える腫瘍を完全に切除できると判断される場合には、外科治療によって長期生存や根治を目指せる可能性があります。
当科では、「腹膜播種だから手術はできない」と最初から決めつけるのではなく、最後まで切除の可能性を追求することを大切にしています。画像検査だけでは判断が難しい場合も含めて、病変の分布や切除可能性を慎重に評価し、患者さん一人ひとりにとって最も有効な治療戦略を検討します。
完全切除を目指した積極的な外科治療
腹膜播種の治療において重要なのは、単に手術を行うことではなく、腫瘍をどこまで安全かつ確実に取り切れるかという点です。腹膜播種では、体内に腫瘍が残るかどうかが治療成績に大きく影響します。そのため、当科では完全切除を目標として、目に見える腫瘍を可能な限り取り切る外科治療を積極的に行っています。
手術では、腹膜そのものに加えて、病変が及んでいる部位に応じて、腸管、大網、骨盤内臓器、横隔膜周囲、腹壁側腹膜などを含めた切除を検討します。腫瘍の広がり方は患者さんによって大きく異なるため、画一的な手術ではなく、病変の部位と範囲に応じて切除範囲を計画します。
特に大腸癌腹膜播種では、腸管や骨盤内に病変が広がっていることも多く、単純な腫瘍切除だけでは不十分な場合があります。当科では大腸癌手術、骨盤内手術、再発がん手術、低侵襲手術などの経験を活かし、根治性と安全性の両立を目指した手術を行っています。
また、腹膜偽粘液腫では、腹腔内に広がった粘液性病変を丁寧に取り除くことが治療成績を大きく左右します。見える病変をできる限り取り除き、腫瘍量を減らすことが、症状の改善や長期的な病勢コントロールにつながる可能性があります。
手術だけでなく、薬物療法を組み合わせて切除の可能性を高める
腹膜播種の治療では、手術だけでなく、薬物療法を含めた集学的治療が非常に重要です。
最初の段階で明らかに完全切除が難しい場合でも、薬物療法によって腫瘍の縮小や病勢のコントロールが得られれば、手術の可能性が見えてくることがあります。
当科では、初診時に切除が難しいと考えられる場合でも、そこで治療をあきらめるのではなく、薬物療法の効果を見極めながら、繰り返し切除可能性を評価します。治療開始時には手術が困難と判断された方でも、治療経過の中で病変がコントロールされ、外科治療を検討できる状態になる場合があります。
そのため、当科では、
「今すぐ手術できるか」だけでなく、「治療によって将来的に手術を目指せるか」
という視点を大切にしています。
「切除不能」と言われた場合でも、再評価が重要です
腹膜播種は、通常のCT検査だけでは正確な広がりを判断しにくいことがあります。また、切除可能かどうかの判断には、腹膜播種に対する外科治療の経験や、骨盤内・腹腔内の高度な切除手術に関する専門的な知識が必要です。
そのため、他院で「手術は難しい」「切除不能」と説明された場合でも、専門的な視点で再評価することで、治療の選択肢が見つかることがあります。もちろん、すべての患者さんで手術が可能になるわけではありません。しかし、切除の可能性を十分に検討しないまま治療方針が決まってしまうことは避けるべきだと考えています。
当科では、患者さんの画像所見、病理診断、腫瘍マーカー、全身状態、薬物療法の経過などを詳しく確認し、外科治療の可能性を慎重に検討します。必要に応じて、まず薬物療法を行い、その後に再度手術の可能性を評価する方針をとることもあります。
当科の強み:診断から手術、薬物療法まで一貫した治療戦略
腹膜播種の治療では、外科治療、薬物療法、画像診断、病理診断、全身管理を一体として考える必要があります。治療のどこか一部分だけを見るのではなく、最初の診断から治療経過、手術のタイミング、術後治療、再発リスクへの対応まで、長期的な視点で戦略を立てることが重要です。
当科では、大腸癌腹膜播種および腹膜偽粘液腫に対して、手術だけでなく薬物療法を含めた集学的治療を一つの診療科として一貫して提供しています。これにより、治療の途中で方針が分断されることなく、常に「根治を目指せるか」「長期生存につながる治療は何か」「次に手術のチャンスを作れるか」を考えながら治療を進めることができます。
また、術前治療によって病変の縮小や病勢コントロールを図り、手術の可能性を高めることも重視しています。術後には、再発リスクを考慮しながら補助療法や経過観察を行い、長期的な治療成績の向上を目指します。切除不能な腹膜播種に対しても、患者さんの状態に応じて最適な薬物療法を提供し、病勢の制御と生活の質の維持に努めています。
最後まで切除の可能性を追求します
腹膜播種と診断されると、「もう手術はできないのではないか」「治すことは難しいのではないか」と大きな不安を感じられる方が少なくありません。確かに、腹膜播種は治療が難しい病態です。しかし、病変の広がりや治療への反応によっては、外科治療を含めた積極的な治療により、長期生存や根治を目指せる場合があります。
当科では、
「腹膜播種だから手術できない」ではなく、
「どうすれば切除を目指せるか」
という姿勢で治療に取り組んでいます。
もちろん、無理な手術を行うことが最善とは限りませんし、すべての患者さんに手術が施行できるわけではありません。重要なのは、患者さんの体への負担、手術の安全性、腫瘍を取り切れる可能性、術後の生活の質、薬物療法との組み合わせを総合的に判断することです。そのうえで、手術による利益が期待できる場合には、最後まで切除の可能性を追求します。
大腸癌腹膜播種や腹膜偽粘液腫と診断された方、手術は難しいと言われた方、現在の治療方針に迷われている方は、ぜひ一度ご相談ください。当科では、完全切除を目標とした外科治療と、化学療法を含めた集学的治療により、根治や長期生存を目指した治療に取り組んでいます。


bottom of page
